エピローグ:最強の格闘技ってなんだろう?
ひとこと:
21世紀、現存しているあらゆる武術/格闘技は、表向きには正々堂々としたスポーツマンシップを謳い、プロ選手たちは自分が戦う姿を通して皆に勇気を届けたいと語り、おおよそ全ての武術の指導者たちは相手を敬い自分を律する精神を養うことを目的としていると語ります。
しかし、格闘技や武術の技術は、見れば見るほど、それ自体は相手を傷つける事を前提とした体系になっています。
これは興味深い矛盾であり、武術/格闘技は対峙する相手を殺傷する性質を持ちながらも、(少なくとも表向きは)それを主目的としていない。
そこが格闘技/武術と 暴力の間に引くべき一線なのではないかと思います。
つまり格闘技/武術が 相手の殺傷をゴールとしていない以上、果たして最強の格闘技は何か?という事を考える事自体がそもそも無理なんじゃないか?という気がしました。
本当に強い格闘技選手や武術家は、おそらく謙虚です。自分のピークがいつまでも続かない事を痛感しており、体格差やルールを超えて自分が最強と自負できるほど視野は狭くないはず。
かくして、最強格闘技とはなにかという問いははぐらかされてしまうのでした。